働きやすい
職場認証制度とは?

内容や申請方法までも解説

業界の新しい大きな取り組みである
「働きやすい職場認証制度」について学ぶ。

「働きやすい職場認証制度」は、自動車運送事業に関りがある人しかあまり
耳にする機会がないワードかもしれません。
しかし、最近では他業種の人からも少しずつ注目度が上がってきています。
なぜなら、令和になってから様々な業界での働き方が変わってきているからです。
休職や転職をする人が増え、働き方が変わった人も増えました。
そして、「自分の働いている環境は大丈夫だろうか」、「他の職種に転職するべきだろうか」と考える人が増えることがきっかけになったのでしょう。

この記事では、自動車運送業で転職や、就職を考えている人が主な読者になるかもしれません。しかし、他業界の人が読んでも「1つの業界の新しい大きな取り組み」について学ぶことができ、自分の「今働いている環境」と
照らし合わせることができるでしょう。

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LEARN THE SYSTEM

働きやすい職場認証制度とは?

最初に働きやすい職場認証制度の基本的な情報を紹介します。目的や内容はもちろん、どの機関がいつごろ発足したのかまで説明します。

自動車運送業の人手不足が
きっかけの制度

トラックや高速バスの事故や、タクシートラブルなどの事件をニュースで見かけることが過去に何度もありました。
報道されたトラブルにより、自動車運送業の働き方について疑問を持つ人が増えたのではないのでしょうか。
そして、その疑問は不信感へと代わり、自動車運送業の従事者の数が減るという問題に繋がってしまったのかもしれません。

そこで政府は、自動車運送業の就職希望者数アップを目的としてこの制度を発足させたのです。
そして、自動車運送業の各事業者の「実際に働くときの姿」を求職者にわかりやすくした「働きやすい職場認証制度」が発足されました。

働きやすい職場とは何か?

働きやすい職場認証制度の「働きやすい職場」は、制度の審査項目を見るとわかります。
6つの審査項目を分かりやすくまとめると以下のようになります。

  • 法令をきちんと守っている会社
  • 労働時間や休日が明白
  • 従業員の心身が健康
  • 雇用形態や賃金の面で安心して働ける環境
  • 人材の確保法や育成がしっかりしている
  • 個人の自主性と会社の先進性

上記の内容は、求人票だけを見るとよく目にすることが多いかもしれません。
「高収入」「残業無し」「ボーナス有」など、プラスの要素を求人に記載しているけど、実際に働いてみたら違ったという話は少なくありません。
しかしこうした制度を設けることで、求職者は真実を知ることができます。
働きやすい職場認証制度は自動車運送業のイメージアップをし、「働いてみたら違った!」を限りなく少なくする制度なのです。

国土交通省と厚生労働省による新しい制度

この制度は2つの省により2020年8月に決定されました。
しかし、審査・認証は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)によって行われます。日本海事協会とは、船舶に関するさまざまな事業に携わっている国際船級協会です。

まだ発足されて間もない制度なので、世間的には認知度があまり高くないでしょう。
しかし、この制度の発端は国土交通省と厚生労働省なので「信頼度・安心感」はかなり高いといえます。

また、認知度は少ないですが、認証された事業者が「認証マーク」を利用することができることもポイントです。
目立つオリジナルマークにより、周りからの制度への関心と注目を集める効果が期待できます。

正式名は「運転者職場環境良好度認証制度」

働きやすい職場認証制度は愛称で、正式名称は運転者職場環境良好度認証制度です。また、別名にホワイト経営認証制度という呼び方まであります。
しかし、国土交通省の報道発表資料(各メディアに向けた資料)には「働きやすい職場認証制度」が使われていたので、今後は正式名称よりも愛称の方が広く認知されるでしょう。

また、「環境優良事業者認定制度」や「少額投資非課税制度」など様々な制度の愛称を各議が公募している例をみると、愛称にすることで認知度が広まりやすくなり、親しみやすくなることが期待できます。

働きやすい職場認証制度の
申請から認証まで

ここでは、実際に働きやすい職場認証制度の申請方法や、何が基準として審査されるのかを紹介します。
働きやすい職場認証制度には「星の数による階級」が存在しますが、2020年時点では「一つ星認定」のみの認証なので、一つ星認定についての説明になります。

申請の流れ

令和2年の初年度は9月16日から3ヶ月間の申請期間が設けられました。次年度以降も同じくらいの期間が予想されます。
申請の大まかな流れをリストアップしました。

  • 審査の申請
  • 申請受付・審査料の請求
  • 審査料の振込(確認次第次のステップに進みます)
  • 事前スクリーニング
  • 書面審査(必要に応じて追加書類の提出と対面審査)
  • 審査委員会による審議
  • 運営委員会による承認
  • 審査結果の通知(合格の場合は登録料の請求)
  • 登録料の振込
  • 登録証書の発行・送付、HP上での事業者名公表

インターネット上では、2020年の11月上旬には合格認定された事業者の声が上がっていたので、最速で申請していたとして、約2ヶ月で合否が発表されたと思われます。

申請の対象事業者・資格

対象事業者は以下の3種類です。

  • トラック事業者
    (第二種貨物利用運送事業含む)

    トラック事業には許可制と届出制に別れており、さらにその中でも細分化されています。第二種貨物利用運送事業とは届出制の1つですが、簡単に説明すると、船舶・航空・鉄道も使う事業者です。つまり、トラックの運転手だけではなく、操縦士や運転士にも適応されます。

  • バス事業者
    (乗合バス事業者と貸切バス事業者)

    乗合バスとは一般乗合旅客自動車運送事業のことです。一般的に街の各停留所を走行するバスをイメージするとわかりやすいです。
    個別に料金を支払い、他の乗客と「乗り合わせる」ことが特徴になります。
    そして、貸切バスとは旅行会社や幹事が取りまとめて契約、支払いし、限られた団体だけの乗客が乗るバスです。

  • タクシー事業者

    タクシー事業は、国土交通省の法令ではハイヤー・タクシー事業者となっており、1台のタクシーによる「個人タクシー事業者」も対象となります。
    ハイヤーとタクシーの違いは、ハイヤーが完全予約制に対し、タクシーは街中いつでも乗車できる点です。

申請の必要書類・費用

必要書類

働きやすい職場認証制度を申請するためには、申請用書類と、保管用書類を用意する必要があります。

提出用書類 保管用書類
提出用書類

・ 審査申込書

・ 営業所一蘭

・ 自認書

・ 就業規則(10人未満の事業所は労働基準監督署の印は不要)

・ 36協定写し

・ 労働条件通知書の写し

・ 安全委員会、衛生委員会等の構成員一覧、又は議事次第、議事録等(従業員の意見を聞くための機会を設けた場合はその議事録等)の写し

・ 直近1回分の定期健康診断結果報告書(50人未満は不要)の写し

・ 行政処分違反に対する是正措置を実施したことが確認できる書面(事業改善報告書等)の写し

保管用書類 それぞれの項目の根拠となる資料(対面審査が行われる時に使用される)
費用

働きやすい職場認証制度を申請するためには、申請用書類と、保管用書類を用意する必要があります。

審査料金 55,000円(電子申請の場合は33,000円)
複数の営業所を同時に審査する場合 営業所×3,300円
登録料 66,000円
複数の営業所を同時に登録する場合 営業所×5,500円
登録証書の内容変更 1通×11,000円
登録証書の写し発行 1通×5,500円

これは、「一つ星認定」の料金です。今後、「二つ星認定」や「三つ星認定」が認可されると、値段が変わる可能性があります。

審査項目

上でも紹介しましたが、「働きやすい職場」の基本となる6つの項目を規定し、その項目ごとに点数をつけて評価します。
項目は、以下の6つです。

  • 法令順守等
  • 労働時間・休日
  • 心身の健康
  • 安心・安定
  • 多様な人材の確保・育成
  • 自主性・先進性等

そして、この6項目が更に細分化され、合計で25(バス事業者26、タクシー事業者27)になります。項目ごとに合格点が決められており、
認証の星の数を増やすための基準も確認されるので、詳細は申請案内書を確認してください。

申請する上での注意事項

申請の対象事業者に当てはまっていても、申請の1ヶ月前から1年以内の事業所の状態によっては申請が受け付けてもらえない可能性があります。
注意事項を簡潔にまとめると以下の通りになります。

  • 事業開始後3年経過していない(事業グループの再編成等を除き)
  • 労基関係法令違反でトラブルを起こしてしまった
  • 従業員が不当労働行為をした
  • 行政処分違反点数が20点を超えている
  • 労働時間の限度違反の処分で違反点数が5点を超えている
  • 健康診断、社会保険加入、最低賃金に関して違反点数を受けている

これらが認められる場合、申請を受け付けてもらえません。また、虚偽の申請や他の条件次第でも申請の拒絶や取り消しをされることがあるので、
申請案内書を事前によく確認するようにしてください。

働きやすい職場認証制度が認証されると?

合格し、登録されることで「ホワイト企業」として公式に認められます。
求職者はもちろん、登録された企業を利用する他企業や一般利用者からも「優良な企業」と認識されるでしょう。
肝心の登録期間は2年間です。もし申請が落ちてしまった場合は、現時点では翌年に申請することはできませんが、それ以降でしたら申請が可能になるかもしれません。

働きやすい職場認証制度は
他業種にも期待できる制度

慢性的な人手不足や、就職希望が少ない業種は自動車運送業だけではありません。
このような内容で、他業種に対しても効果がある制度が一般的になれば人手不足の解消に繋がるかもしれません。

働きやすい職場認証制度はまだ発足されて間もないので、今後内容が変わるかもしれませんが、他の業種の希望にもなればいいですね。